
このような疑問をこれまでに人材サービス業界で20年以上勤務している私がお答えします。
介護職員初任者研修は、介護の基礎知識を学べる入門資格で、無資格ではできない仕事に就けるようになります。
高齢化が進む日本では、専門スキルを持つ人材の需要が急増しており、就職やキャリアアップにも有利な資格です。
本記事では、介護職員初任者研修の資格取得方法、選ぶべきスクールのポイントなど、わかりやすく解説します。


介護職員初任者研修とはどんな資格なのか?


介護職員初任者研修は、高齢者や障がいのある方をサポートするための基本的な知識と技術を学べる資格です。
資格取得すると、無資格では行えない身体介護(入浴・食事・排せつの介助など)やヘルパーとして利用者のお宅を訪問する仕事に就けます。
以前は「ホームヘルパー2級」と呼ばれていましたが、2013年に「介護職員初任者研修」に変わりました。



介護の仕事が初めての方だけでなく、家族の介護に備えて学ぶ方にも人気の入門資格です。
介護職員初任者研修の資格を取得したらできる仕事は?
介護職員初任者研修を修了すると、無資格ではできない「身体介護」にも携われるようになります。
訪問介護事業所やデイサービス、特別養護老人ホームなど、活躍できる現場は幅広いです。
生活援助だけでなく、より専門的な介護も行えるため、仕事内容や働く場所の選択肢が広がります。
介護職員初任者研修 | 無資格 | |
身体介護 | 〇 | × |
生活援助 | 〇 | 〇 |
身体介護とは
身体介護は、自分だけではできない食事や入浴、トイレ、着替え、移動などを手助けするサービスです。
ただ補助するのではなく、できることは自分でできるように見守りながら、安心して生活できるよう支えます。



施設サービスやデイサービスは、介護職員初任者研修資格がなくても身体介護が可能です。訪問ヘルパーは資格が必要です。
生活援助とは
生活援助は、毎日の暮らしを手助けするサービスです。
掃除や洗濯、料理、買い物などの家事をサポートしたり、通院に付き添ったりします。
体を直接支える「身体介護」と違って、生活を整えるお手伝いが中心です。



生活援助は無資格でも働けます。ただ、できる仕事内容が限られているため、介護職員初任者研修の資格を取得することをおすすめします。
介護職員初任者研修が重要視される理由


介護職員初任者研修が重要視される理由は、日本社会の高齢化と介護業界における制度の変化にあります。
ここでは、多くの施設や事業所でこの資格が求められる理由について説明します。
2024年4月以降、介護職は無資格では働けなくなりました。
2024年から介護の仕事をする方は、最低でも「認知症介護基礎研修」を受けないと働けなくなりました。
基礎研修は4〜5時間で終わる簡単な内容ですが、お給料アップや就職で有利になる資格ではありません。
介護職員初任者研修を持っていれば、認知症介護基礎研修の受講は免除されます。
高齢化が急速に進み、介護スタッフの必要性が高まっている
日本では65歳以上の高齢者が増え続けており、介護を必要とする方の数も年々増加しています。
厚生労働省の計算では、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の人材が必要です。
現在より50万人以上の介護スタッフが不足すると言われています。


※参照:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」



介護職員初任者研修は、介護の知識や技術を身につけた証明になる資格です。多くの介護事業所から必要とされる、とても価値のある資格です。
介護職員初任者研修の資格取得で期待できること5つ


介護職員初任者研修を取得することで得られる具体的なメリットを5つご紹介します。
- 介護への基礎スキルが身につく
- 就職の幅が広がる
- 給与アップの可能性がある
- キャリアアップの第一歩になる
- 自信を持って仕事を始められる
1、介護への基礎スキルが身につく
介護職員初任者研修では、食事・排せつ・移動・入浴などの身体介助の基本を学習。
正しい介護の方法を身につけることで利用者を安全に支援でき、専門的な業務も行えるようになります。
経験豊富な講師が実践的に教えてくれるため、初心者も安心して介護の仕事を始められるのが大きな魅力です。



身につけた知識や技術は、仕事だけでなく将来ご家族を介護する場面でもきっと役立ちます。
2、就職の幅が広がる
介護職員初任者研修を持っていると、応募できる求人の数が大幅に増えます。
求人サイトのデータによると、無資格者に比べ、応募できる求人数は約2倍。
資格を持つことで、正社員の募集にも応募しやすくなり、希望する条件の職場を見つけやすくなるのです。
そのため、長く安心して働ける職場を選びやすくなる大きなメリットがあります。
保有資格 | 応募可能求人 |
---|---|
介護職員初任者研修以上 | 50,354件 |
保有資格なし | 23,979件 |
引用元:求人サイト『カイゴジョブ』に掲載のある求人数 ※2024年5月現在
3、給与アップの可能性がある
介護職員初任者研修の資格を持つことで、多くの職場で資格手当が支給されます。
厚生労働省のデータでは、介護職員初任者研修保有者と無資格者の平均年収に約39万円の差が見られました。
パートタイムで働く場合も資格手当などが加算され、時給があがるケースも多いです。
介護職員【正社員】の月給・年収
保有資格など | 月給 | 年収 |
---|---|---|
介護職員初任者研修修了者 | 302,910円 | 3,634,920円 |
無資格者 | 270,530円 | 3,246,360円 |
介護職員の平均 | 318,230円 | 3,818,760円 |
出典 厚生労働省:令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要
※処遇改善加算を算定している事業所の、常勤介護職員の保有資格別平均給与(月給)の状況を引用
4、キャリアアップの第一歩になる


介護職員初任者研修は、介護の世界で最初に取得する基本の資格です。
資格取得すると次の段階の「介護福祉士実務者研修」に進みやすくなり、一部の研修が免除されます。
その先にある国家資格「介護福祉士」を取得すれば、年齢に関係なく就職で困ることはありません。
介護職員初任者研修は、将来的に専門職として活躍するための大切な第一歩になる資格です。
5、自信を持って仕事を始められる
初めて介護の仕事をする人は、「自分にできるだろうか」と不安に思いがちです。
介護職員初任者研修では、現場で必要な知識や技術だけでなく、介護の考え方も学べます。
資格を取得することで、自分のスキルに自信が持て、安心して仕事に臨めるようになります。
利用者一人ひとりに寄り添ったサポートができ、職場でも落ち着いて業務に取り組めるでしょう。



資格があるだけで、心強く感じられます。
介護職員初任者研修は通信と通学の2つのスタイルから選べます!


介護職員初任者研修の受講方法には、通信講座と通学講座の2つのスタイルがあります。
ライフスタイルに合わせて選択しましょう。
通信講座
通信講座は自宅学習と通学を組み合わせた学習スタイルで、忙しい方におすすめです。
通学講座の仕組み | 自宅学習(テキスト・DVDなど)+ 実技講習の組み合わせ ※総時間130時間のうち、40.5時間は必ず実技講習が必要 |
---|---|
学習期間 | 一般的に3〜4ヶ月程度 ※最短1ヶ月〜最長1年程度(講座により異なる) |
費用相場 | 5万円〜10万円程度 ※教材費・実技講習費込み |
メリット | ・自分のペースで学習できる ・仕事や家事と両立しやすい ・通学より費用が安い場合が多い |
デメリット | ・自己管理が必要 ・質問がしにくい ・完全在宅では資格取得できない |



介護職員初任者研修のカリキュラムには実技研修も含まれているため、通信のみで講座を修了することはできません。
通学講座
通学講座は講師から直接指導を受けられ、わからないことをその場で質問でき、理解を深めながら学べます。
じっくりと基礎から学びたい方向けです。
通学講座の仕組み | 全130時間をスクールに通って受講 ※講義(座学)+ 実技演習をすべて教室で実施 ※週1〜3回程度の通学が一般的 |
---|---|
学習期間 | 1〜4ヶ月程度 ※平日、土日、夜間コースなど選択可能 ※短期集中コースなら1ヶ月で修了 |
費用相場 | 6万円〜15万円程度 ※立地や設備により差がある |
メリット | ・講師に直接質問できる ・実技をしっかり学べる ・同期生との交流でモチベーション維持 ・就職サポートが充実している場合が多い |
デメリット | ・決まった時間に通学が必要 ・通信講座より費用が高め ・交通費がかかる |



学習スケジュールが決められているため、自分で計画を立てるのが苦手な方におすすめです。
働きながら介護職員初任者研修の資格を取るなら土日、夜間コースがオススメ!
現在お仕事をされている方には、平日以外の時間を活用できる土日、夜間コースが便利。
お仕事を続けながらでも3~4ヶ月程度で資格取得が可能です。
土日コースの場合は、週末の土曜日と日曜日を利用して通学するため、平日はお仕事に専念できます。
夜間コースの場合は、平日の仕事終わりに受講できるため、休日はプライベートも充実。
こうした選択肢を使えば、無理なく資格を取り、安心して介護の仕事に挑めます。



多くのスクールで土日、夜間コースを設けていますので、通いやすい環境を選びましょう。
介護職員初任者研修講座選びで押さえておきたい5つのこと


- 受講料がリーズナブル
- アクセスが良い
- 無料で振替受講のサポートがある
- 平日、土日問わず豊富なスケジュールから選べる
- 就職・転職をしっかり支援してくれる
介護職員初任者研修の講座は、どのスクールでも学ぶ内容は同じですが費用やサポート体制などに違いがあります。
ここでは、受講申込み前に押さえておきたい5つのことを紹介します。
1、受講料がリーズナブル
スクール選びでは受講料が大きな判断基準になります。
費用が高すぎると途中で続けにくくなるため、無理のない金額で学べることが重要です。
実際には、スクールごとに割引キャンペーンやハローワークを通じた給付制度が利用できるかもしれません。



費用を抑える方法を事前に調べることで、安心して学習を始められます。
2、アクセスが良い
講座は15日以上通学が必要なため、自宅や職場から通いやすいスクールを選ぶことが大切です。
片道1時間以上かかる場所だと、通学が負担になり挫折する原因にもなります。
目安としては、自宅や勤務先から30分以内で通える場所がおすすめ。
無理なく通える環境を整えることで、修了まで続けやすくなります。
3、無料で振替受講のサポートがある
受講期間中は体調不良や仕事の都合で休まないといけないことがあるかもしれません。
そのときに、無料で振替受講できる制度があるかどうかは大きな安心材料です。
スクールによっては振替回数に制限があったり、有料になる場合もあります。



予定外の休みにも柔軟に対応できるよう、前もって制度内容を確認しておきましょう。
4、平日、土日問わず豊富なスケジュールから選べる
資格取得を目指す方にとって、受講スケジュールの選びやすさは重要です。
スクールによっては平日の昼間だけでなく、土日、夜間コースを設けています。
働きながら学ぶ方は土日、夜間コースがおすすめ。
休職中など時間に余裕のある方なら短期集中型を選ぶのも良いでしょう。
自分の生活リズムに合った日程を選ぶことで、無理なく学び続けられます。
5、就職・転職をしっかり支援してくれる
資格取得後に就職や転職を考える方にとって、キャリア支援の充実度は大切なポイントです。
スクールによっては、提携先施設への求人紹介や履歴書添削、面接対策などを行ってくれるところもあります。
受講料のキャッシュバック制度と就職支援がセットになっているケースもあり、費用面でも安心です。
学んだ知識を実際の職場で活かすために、各スクールのサポート内容を事前にしっかりと確認しておきましょう。



学んだ知識を実際の職場で活かすために、各スクールのサポート内容を事前にしっかりと確認しておきましょう。
介護職員初任者研修のカリキュラムについて


介護職員初任者研修は、厚生労働省の指針に基づき、全国統一のカリキュラムです。
ここでは、学べる内容から実技演習、修了試験の概要、取得に必要な期間や費用について解説します。
カリキュラムで学べること
介護職員初任者研修のカリキュラムは厚生労働省によって統一されており、全国共通の内容を学べます。
合計130時間のカリキュラムは10の項目で構成され、介護に必要な基礎知識を習得できる仕組みになっています。
具体的には、介護職の役割や職業倫理といった基本的な考え方から、老化や認知症への理解、介護保険制度の仕組みまで幅広く学びます。
項目 | 総学習時間 | 通信学習の上限時間 |
---|---|---|
1.職務の理解 | 6時間 | ― |
2.介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 | 7.5時間 |
3.介護の基本 | 6時間 | 3時間 |
4.介護・福祉サービスの理解と医療の連携 | 9時間 | 7.5時間 |
5.介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 | 3時間 |
6.老化の理解 | 6時間 | 3時間 |
7.認知症の理解 | 6時間 | 3時間 |
8.障害の理解 | 3時間 | 1.5時間 |
9.こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75時間 | 12時間 |
10.振り返り | 4時間 | ― |
合計 | 130時間 | 40.5時間 |
実技演習で学べること
実技演習では、介護現場で実際に必要となる身体介護の技術を実践的に学びます。
利用者の安全を最優先にした正しい介助方法を習得できるのが特徴です。
現場経験豊富な講師が担当するため、教科書だけでは学べない実践的なコツや注意点も身につきます。
例えば、利用者さんの体に負担をかけない移乗方法や、転倒を防ぐための歩行介助のポイントなどを詳しく指導してもらえます。
①排泄介助 ②食事介助 ③移動・移乗 ④ベッドメイキング ⑤更衣介助 ⑥入浴介助



実技演習で学んだ技術は将来職場で働く際はもちろん、ご家族の介護が必要になったときにも大いに役立ちます。
修了試験は難しい?
介護職員初任者研修の修了試験は、受講生を落とすためのものではありません。
学習内容がきちんと理解できているかを確認する試験です。
出題範囲は受講したテキストの内容に限られています。
授業中に講師が「重要」と説明した箇所や、テキストで太字になっている部分を中心に復習しておけば大丈夫です。
万が一不合格になった場合でも、多くのスクールで合格するまで何度でも追試を受けられる制度があります。
試験に対する不安がある方は、スクール選びの際に追試制度について事前に確認しておくと安心でしょう。



授業を真面目に受講していれば、ほぼ100%合格できる難易度に設定されています。
試験内容
修了試験は各スクールが独自に作成する筆記試験で、学習した10科目すべてから出題されます。
問題数は32問以上、試験時間は約1時間で100点満点中70点以上取れば合格できます。
出題形式はスクールによって異なりますが、選択式や記述式が多く採用されています。
例えば「介護における尊厳の保持について正しいものを選びなさい」といった選択問題や、「認知症の方への接し方で大切なことを述べなさい」といった記述問題が出題されるでしょう。



試験に合格すると、各スクールから修了証明書が発行され、正式に介護職員初任者研修修了者として認定されます。
介護職員初任者研修の取得期間
介護職員初任者研修の取得期間は、選択するコースによって大きく異なります。
最短では1.5ヶ月程度、じっくり学ぶコースでは4ヶ月程度が目安で、自分のライフスタイルに合わせて選択可能です。
例えば、平日の集中コースを選択すれば、毎日6~7時間の受講で約3週間の通学期間となります。
働きながら受講する土日コースの場合は、3~4ヶ月かけて取得できます。
通信講座を併用すれば、スクールに通う日数を約15日程度に短縮でき、無理なく資格取得が可能です。
受講費用
介護職員初任者研修の受講費用は地域やスクールによって差があります。
一般的な相場は5万円から10万円程度で、通信講座の方が通学講座より安い傾向にあります。
ハローワークの給付制度を利用できれば、受講料の最大20%の還付を受けられます。
また、自治体の助成制度や就職条件付きキャッシュバック制度を設けているスクールも多いです。



分割払いに対応しているスクールなら、月1万円程度の支払いで受講することもできます。
介護職員初任者研修の資格の取り方のまとめ


介護職員初任者研修は、介護の基礎知識と技術を学べる入門的な資格です。
無資格者は「認知症介護基礎研修」を修了すれば一定の業務に従事できますが、介護の仕事を長く続けたい、キャリアを積みたいと考えるなら「介護職員初任者研修」から始めるのがおすすめです。
現在、日本では高齢者の増加で介護スタッフが不足しており、有資格者の需要が高まっている状況です。
資格があると就職先を見つけやすく、給与面でも無資格者と比べて年間約39万円の差が生まれています。
受講方法は通信講座と通学講座から選択でき、土日、夜間コースを利用することで働きながらでも取得可能です。
資格取得には130時間のカリキュラムを修了し、修了試験(筆記および実技)に合格する必要があります。
試験の難易度はそれほど高くなく真面目に受講していればほぼ100%合格できるため、初めて介護に触れる方も取得しやすい資格です。



スクール選びでは費用やアクセス、サポート体制、受講方法などを比べ、自分にとって何を優先するかをよく考えて決めましょう。
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